灌漑富国


この島国の豊かさ ―― それは紛うことなく地球を10周する灌漑水路である

山川は万物生々の本 蒼生悠々の業 山川は天下の本なり 【熊沢蕃山】

灌漑とは「田畑に水を引いてそそぎ、土地を潤すこと」。
土を掘り、川を塞き止め、水を引き、
命を賭して国土を築きあげてきた幾千万の農民たち。

その複雑高度な水路網はこの急峻な国土を隅々まで潤し、
一億もの人口を養ってきました。

そうした「農」の営みは、四季折々に自然と向き合う術を諭し、
地域の風土や人々の気質をも形成、
世界に誇るべき高度な和算・物理力学を生み、
郷土の多彩な伝統文化を育みながら、
神として奉られる多士済済の篤農家を輩出してきました。

二千年にわたって営々と築かれてきた国土の礎。
歴史を紐解くまでもなく、「農」の営みは国造りそのものでした。

水路の延長約40万km。地球10周分という
途方もない長さの人工物は世界に比類なき偉業、
一億人を養う悠久の資産と言っても過言ではないでしょう。

しかし、近年、とみに荒んできた山々。
とりわけ水源林は川、水路、農地とつながる
壮大な循環システムの源泉です。
世界一の水質と豊潤な土壌もまた山の贈り物。
私たちの世代で山を見失ってはなりません。

水土里(みどり)の資源を次世代に――
それは近代文明と先人の恩恵を余すところなく享受してきた
私たちに課せられた最大の責務ではないでしょうか。

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