山川は天下の本なり-森林の多面的機能

ヨーロッパやアメリカの農地は畑や牧場が中心ですから、農場を開拓する場合にはどんどん森を切り開いていきました。ところが、水田はそういうわけにはいきません。水を引いてこなければならないので、通常は川の上流よりも標高の低い地域しか開発できません。台地や段丘に水田が造られるのは明治以後、ポンプの輸入や大規模な水利事業が可能になってからです。あるいは、いくら平野が広くても川の水量が少なければ、水田はできなかったのです。つまり、水田の開発面積は、使える水の量に比例していました。
一方、森林は水源林という言葉があるように、水を生み出します。昔の農民たちは山から流れ出る川の水が枯れないように、せっせと山に木を植え続けたといいます。また、山、特に里山は、木材や薪だけでなく、農地の肥料(草木)を得る大切な場所であり、村の財産でもありました。したがって、日本では農地は少ない代わりに、森が多く残ったというわけです。
ヨーロッパの緑被率(山や森林で被われている割合)は20~30%、イギリスは約10%、ドイツも30%程度に過ぎません。これに対して、日本の緑被率は約70%。この数値は、少なくとも先進国の中では突出した数値です。森林は二酸化炭素(CO2)を吸収します。日本が水田社会であったことは、結果的に、現在国際的問題となっている温暖化防止に貢献していることになります。

森林の多面的機能

日本の森林は国土面積の約七割に相当する2,500万haを占めており、林業や木材産業、農山村の人々によって守り育てられています。
この貴重な森林の多くは水源地域に位置しており、水や空気など私たちの豊かな生活を守るために、大切な働きをしています。水源地域の森林が持っている水源かん養機能や土砂の流出・崩壊防止等の機能は、良質な農業用水の安定的な供給と国土の保全に役立っています。
このため、水源地域の森林において、良好な森林水環境の形成を図る必要があります。

生物多様性保全機能

我が国の森林は、約80種の鳥類、約3,400種の植物をはじめとする野生動植物の生息・生育の場となっています。

地球温暖化防止機能

森林は、温暖化の原因である二酸化炭素を吸収し、炭素の形で固定して、地球の温暖化防止に重要な役割を果たしています。京都議定書の6%削減約束の達成のうち、森林により、3.8%(1,300万炭素トン)を確保することとしています。
このため、平成19年度から6年間で330万haの間伐を実施することとしています。

土砂災害防止機能

森林の下層植生や落枝落葉が地表の浸食を抑制し、樹木が根を張り巡らすことで、土砂の崩壊を防止します。

洪水緩和機能(水源かん養)

森林土壌は、小さな間隙を多数有しており、降った雨をスポンジのように吸収します。

渇水緩和機能(水源かん養)

森林は雨水を土壌に貯えることで川の流量が急増するのを抑え、雨が止んだ後も徐々に流出させます。

水質浄化機能(水源かん養)

森林は、土砂の流出・崩壊防止機能の発揮により、水が濁るのを防ぎます。また、雨水などが森林を通って土壌に染み込み、最後に渓流に流出するまでに、リンや窒素などの富栄養化の原因となる物質は、土壌中に保留されたり、植物に吸収されたりする一方で、土壌中のミネラル成分などがバランス良く溶け出します。このような様々な機能により、森林はおいしい水をつくります。

物質生産機能

森林は木材やきのこなどの林産物を生産しています。こうした林産物は、国民生活の欠くことのできないものであり、その生活を豊かにすると同時に、山村地域の社会・経済の活性化にとって重要な資源です。

生活環境形成機能

森林は、蒸発散作用等により気候を緩和するとともに、防風や防音、樹木の樹冠による塵埃の吸着、いわゆるヒートアイランド現象の緩和等により、快適な環境形成に寄与しています。

保健機能

森林は、フィトンチッドに代表される樹木からの揮発性物質により直接的な健康増進効果が得られるほか、行楽やスポーツの場を提供しています。