アグリ・ネクスト・ジャパン | アーカイブ
第一章 第二章 第三章 「農」が造った国土
17 18 19 20 21 22 23 24
第四章
アジア・モンスーン ―地球10周分の水路網  日本は山国であり、平野が少ないことはすでに述べました。おまけにタツノオトシゴのように細長い島国です。その細長い島の中央には、2〜3000m級の山脈が連なっています。必然的に、川は短く、勾配はかなり急になります。下のグラフは、横軸が川の長さ、縦軸が川の標高を示しています。

 明治の頃、日本の川の改修に招かれたある外国人技術者は、「これは川ではない、滝だ」と叫んだという話が残っています。大きな平野を何百kmも流れる欧米の大河に比べて、日本の川のほとんどは、標高1000m以上の山から、あっという間に海へ流れ出てしまいます。確かに、「これは滝だ」と叫びたくなりますね。
図1 日本と大陸の河川の縦断面曲線
資料: 高橋裕「河川工学」東京大学出版会 1990
 さらに日本は、アジア・モンスーンという暴れ馬のような気象の下にあります。台風が年に何回となく襲い、集中豪雨に見舞われます。年間降雨量は世界平均の約2倍。しかも、雨は梅雨時から夏にかけて集中しています。かと思えば、空梅雨(からつゆ)といってほとんど雨の降らない夏が続いたりします。したがって、川の水量の変動が激しい。川の最大流量と最小流量の差は外国の河川と比べるとケタ違いに大きいのです(図2)。
図2 河況係数(大量流量/最小流量)の比較
資料: 高橋裕「河川工学」東京大学出版会 1990
 70%のエリアを占める山々に降った豪雨は、濁流となって平野部を襲い、流路も定まらぬまま氾濫を繰り返していました。三大都市圏である関東平野、濃尾平野、大阪平野も都市ができたのは戦国から江戸時代にかけてであり、それまでは利根川、木曽川、淀川などの一大氾濫源でした。 農民たちは、そうした水浸しの土地を畦(あぜ)で囲い、太い川の流れをいくつもの川に分散させるようにして網の目のような水路を造り、何百年とかけて見事な水田平野に変えてきたのです。

 そのわずか25%という狭い平野に引かれた水路の長さは、合計約40万km。実に、地球10周分に相当する長さの水路網がちょうど毛細血管のように細かく張りめぐらされ、日本の大地は生きた土地たりえているのです。

line
前のページ 次のページ
アーカイブのトップへ 統合トップへ
アグリ・ネクスト・ジャパン
© AGRI NEXT JAPAN All Rights Reserved. このサイトに掲載の全ての記事・写真の無断転載を禁じます。