1-企業活動と生物多様性

1.世界的ブランドの窮地

KitKatをもじったアイコンも
ネットに登場。

 2010年3月、世界最大の飲料メーカーであるネスレ社は、人気商品であるチョコレート<KitKat(キットカット)>の原料として森林破壊に関与したパーム油を使用していることがグリーンピース(国際的な環境保護団体)に指摘され、世界中から猛烈なバッシングを受けました。

 インドネシアでは、パーム油の原料を作る大規模プランテーションのために熱帯雨林がつぎつぎと切り開かれ、住民やオランウータンなどの動物が危機にさらされているらしい。

 こうしたことを映像で訴えたグリーンピースの抗議ビデオは「You Tube」で150万回以上視聴され、2カ月間で34カ国から30万通以上のメッセージが寄せられたといいます。 

 中には「キットカットにはオランウータンの指が入っている」というセンセーショナルなビデオ(※Youtubeで「greenpeace - kitkat - Ask Nestlé CEO」で検索。ただし、この動画にはグロテスクな表現が含まれていますので、ご注意を。)もあり、ネスレ社の「Face Book」のファンページは炎上したとか。

 同年5月、ネスレ社はその製品の使用中止を決定し、原材料調達のガイドラインを定めるとともにオランウータンの保護を進める方針を発表しました。世界的大企業にしては、抗議を受けてから2ヶ月という異常に早い対応です。

 同社は生物多様性に配慮したパーム油も購入しており、抗議されたパーム油はわずかだったらしい。しかし、世界的ブランドであるがために少量でも標的にされたようです。

 ことの是非はともかく、ネスレ社をめぐるこの一連の騒動はたとえ企業が森林破壊に直接関与していなくとも、関与した疑いのある原材料を少し使うだけで抗議の標的とされる時代になってきたことを意味しています。

 日本も対岸の火事として安穏に構えてはいられなくなってきました。例えばインドネシアの2大製紙メーカーであるエイプリル社が取得していたFSCという森林認証(森林環境保全に配慮した生産材などにつける認証マーク)が取り消されましたが、日本のコピー用紙の3割はインドネシア産らしく、ネスレ社のように抗議の標的にされかねません。

 あるいは安い外材を使っている住宅メーカーなども、その木材が森林破壊に等しい方法で伐採されているとすれば、バッシングの対象になります。森林破壊に限らず、ゴム、油脂、繊維、化学原料など日本は多くのモノを発展途上国から輸入しているので、外国の原材料がどういう方法で採取されているかということは日本のメーカーにとっても重要な問題となってくるはずです。

 こうしたことは欧州ではすでに当たり前になりつつあり、、例えば高級ブランドのバッグなども生物多様性に配慮した原材料を使っていることがブランドの重要な要素となってきているようです。