1-企業活動と生物多様性

3.生物多様性劣化の要因

このような著しい種の絶滅、あるいは生物多様性の急速な劣化はどうして引き起こされたのでしょうか。直接的な原因としては、次のようなものが挙げられています。


アマゾンの森林における
2002年と2006年の比較。
たった4年で広大な面積が開発。
森もズタズタに分断されている。
Amazon Deforestation and Farming

a) 生息地の消失

 アマゾンの熱帯雨林の開発や湿地の埋め立てに見られるように、動植物の生息可能なエリア自体が急激に減少してきたこと。


b) 生息地の独立化や分断化

 生息地そのものの減少は少なくても、都市開発などによって森林や湿地帯などの連続性が分断されれば動植物の生存条件は厳しくなる。


c) 乱獲、過度の捕獲や植物の採取

 大型トロール船などに代表される乱獲や、毛皮・象牙・皮革などを目的とした過度の捕獲によって、動物の食物連鎖を乱し、生物多様性を劣化させたこと。


d) 化学的物質による環境汚染

 農薬や枯葉剤、化学工場がたれ流す汚染物質、工場のばい煙や産業廃棄物による大気、雨、土壌の汚染などによって、多くの生き物が死滅、生態系の異変を生じさせた。


e) 外来生物種の侵入による捕食や遺伝子汚染

 ブラックバスなどのように繁殖力の強い外来種は天敵がいないため急激に増殖して他の生き物を捕食したり、同種の生物と交わって遺伝子汚染を引き起こし生態系を乱した。


f) その他

 他にも地球の温暖化に伴なう気候変動やその他さまざまな地球環境問題が生物多様性に影響を与えてくることが考えらる。あるいは、未知の病原菌など科学的に解明されていない要因が絡んでいる可能性も否定できない。

 例えば、約16億8000万トンとも言われるウランの採掘残土は大部分が野積みのまま放置されているらしく、こうした放射性廃棄物が生物多様性に与えるダメージもまだよく分っていません。

 言うまでもないことですが、これらはお互いに絡み合って相乗効果をもたらしていることになります。

 さて、こうして要因を挙げてみると、いずれも人間の経済活動がもたらしたものであることがはっきりします。つまり、これまでの5度にわたる大絶滅は人類がまだ出現していない太古の出来事であり、大自然の何らかの異変、もしくは必然の成り行きによって引き起こされたものですが、6度目の大絶滅は紛れもなく人間の活動が要因となっている。

 1年で4万種という異常な絶滅速度も、環境を激変させる力を持った60億というヒトの出現を考えれば、うなずけないこともありません。

 いわば、ヒトという動物が地球という生態系にとってはモンスター級の外来種であったとも言えます。とりわけ産業革命以降の文明の発達や経済活動が絶滅速度を早めたということは疑いようのない事実でしょう。

自然保護の思想は近代からあったわけですが、その多くは経済活動と矛盾してきたがために対立的な関係が続きました。現代になってCO2による地球温暖化が問題視され始めても、環境問題と企業活動はいわばトレードオフ(二律背反)の関係にあったわけです。

 しかし、欧州では数十年前から巨大企業自らがこの生物多様性の問題に積極的に取り組んでいます。それは何故かと言うと、企業は自然の生態系から限りないくらいに恩恵を受けているからです。いわゆる「生態系サービス」と呼ばれるものです。