3-水田の生物多様性を守るために

1.トキと暮らす水田へ

 2011年3月、佐渡市では通算4回目のトキ放鳥が行なわれました。すでにこれまで3回の放鳥が行なわれ42羽が飛び立っています。新潟県では、平成27年頃までに60羽を定着させる「新潟県トキ野生復帰推進計画」(H17)を立てています。

(以下は「トキと共生する島」佐渡の農業農村整備-“餌場づくり”から“トキと暮らす水田”へ -(宮里圭一)からの抜粋、要約)。詳しくは同サイトをご覧ください。


a) 餌場の確保

新潟市に飛来したトキ

 60羽のトキを定着させるためには、当然のことながら佐渡島にエサが豊富であることが条件になってきます。野生復帰計画の最大の課題が「餌場の確保」ということになります。

トキはドジョウ、カエル、タニシなど動物性のエサを食べることが分かっています。したがって、水田の整備にあたっては、トキのエサとなる動物の生息とともに、これらの動物が食べる小魚、植物、プランクトンなど多様な生物が生息できる環境、つまりトキを頂点とする生態系ピラミッドの確保が必要となってきます。

県では「餌となる生物の総量を向上させる取組」として次のような計画を進めています。

  • 餌場の造成(大規模な生態系保全工事は公共団体、簡易な工事は農家や住民など)
  • 生態系を保全し、回復するための水田環境づくり(生態系保全型水田づくり)
  • 環境保全型農業の推進と地域での合意形成(有機栽培や冬期湛水や不耕起などの営農)
  • 自然と共生する河川・渓流づくり(近自然型工法の導入)
  • 主要な餌資源であるドジョウの確保
  • 餌場の維持管理

b) 餌場確保のための生態系保全工法

具体的には次のような生態系保全工法を実施している。

  • 「江」の創出(写真はサイトを参照)
    水田の一部に通年湛水の可能な「江」を造り、水生動物の生息環境を確保する。
  • 水田魚道(写真はサイトを参照)
    水田と排水路をパイプでつなぎ、ドジョウの通路を確保。
  • 水路内魚道(写真はサイトを参照)
    大きい落差工の脇に魚道を設置する。
  • よどみ工(写真はサイトを参照)
    水路の底によどみをつくり。ドジョウ・アユの生息環境を創る。
  • 用水池型ビオトープ(写真はサイトを参照)
    ドジョウやカエルなどのため、階段形状の用水池と数種のビオトープをつくる。

 これらの工法は設置後の調査の結果、いずれもドジョウや魚などの増加が確認され、エサになる生物の生息環境が確保されつつある。


c) 農家の協力

 明治頃まではトキは田畑を踏み荒らす害鳥であった。過疎高齢化に悩み、農業による収入もままならない農家に環境保全型農業を強いるのは無理。「農家がいくらかでも歩み寄り、それをトキに受け入れてもらうことを試行錯誤することが野生復帰に向けた取組になるのではないか。現在の農業に工夫こらしながら、しかもトキと付き合っていく社会を模索し、お互いに一緒に生きてこその野生復帰である」。

こうした計画が成果をあげるためには農家の協力が不可欠というわけです。


d) 朱鷺と暮らす郷づくり認証制度

 そのため佐渡市では「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」を行なっている。市ではこの認証制度の認定を受けた農家には助成金を出し、PRや販売先ルートの開拓にも力を入れており、また販売金の一部(1kgに1円)を「朱鷺募金」に寄付している。

 ある大手スーパーでは魚沼産コシヒカリに次ぐ高い値段で販売されており、佐渡市ではこの認証米により佐渡米全体の売り上げ向上につなげたいと考えているとのこと。