3-水田の生物多様性を守るために

2.コウノトリの野生復帰に向けて

 兵庫県北部の但馬地域におけるコウノトリの保護活動は、官民一体となって50年以上続けられてきましたが、1971年、この地を最後に絶滅。1985年、ロシアから幼鳥 6羽を受贈され、その繁殖に成功、1992年野生復帰計画がスタートしました。県では「コウノトリ野生復帰推進計画」(H15.3策定)の実現に向けて、住民、関係団体、学識者、行政で組織する「コウノトリ野生復帰推進連絡協議会」を設置。多様な主体が協議・連携を図り、人と自然が共生する地域づくりを進めながらコウノトリの野生復帰をめざしています。

(以下は「豊かな自然環境をめざして-コウノトリ野生復帰と農業・農村の整備-矢部誠一」からの抜粋、要約)。詳しくは同サイトをご覧ください。


1)生態系保全型工法

a)水田魚道

事業では、生息する魚種・個体数、対象魚種、地形条件、水利条件など地域に適した構造を検討し、以下のような水田魚道を設置している。

  • 木製魚道
    最初に取り組んだ木製魚道。現在はコンクリート製。
  • ハーフコーン型魚道
    水路内に半円錐形を交互に設置。魚類等の遡上効果は高い。
  • 波付ポリエチレンU字溝の開渠型
    水田と水路をU字溝の開渠でつなぐ。
  • 波付ポリエチレン管の簡易な暗渠型
    緩勾配区間や休憩・避難場所として途中に十字管を設置。遡上効果は高い。

安価であり、今後普及させたい魚道。

b)一筆排水併用型水田魚道桝

全筆に一筆排水併用型水田魚道桝を設置。水位の高低によらず、生き物が水田に進入できるように、三次元のスロープを設置。

c)生態系保全型水路

生き物が生息し易くするため、従来の水路を改良し、よどみやスロープを設置。

d)水路型ビオトープ

水田内に素掘り水路を設け、魚類等がパイプを通って避難できる場所を確保。

e)魚巣の改良

遊泳魚のエリア、甲殻類及び夜行性の魚類のエリアを持つ構造の魚巣を設置。

f)排水路の落差工改良

排水路の落差工を改良し、遡上を容易にした例

g)河川放流部(樋門)の改良

既設の樋門に魚道を設置。

h)水域ネットワークの形成

河川、用水路、水田、排水路、これらの水系が連続していることが、水田を産卵場所としている種にとって大切で、また、生息実態に合った環境整備が重要である。


2)環境保全型農法

 さらにコウノトリとの共生を目指すために化学肥料や農薬を極力減らすとともに、次のような「コウノトリを育む農法」を実施している。

  • 冬期湛水(11月頃より)・早期湛水・深水管理(雑草の抑制)・中干し延期などの水管理。
  • 堆肥・土作り資材の使用・温湯消毒・農薬に頼らない除草技術・減農薬。
  • 上述した生態系保全型工法に加え畦草刈りの徹底など。
  • オタマジャクシがカエルになるまで、稲作期間中の落水時期を遅らす。
  • 無農薬栽培では、機械除草等により畦草刈りを徹底。

 これらの農法によって、非常に品質の高い米が生産されており、JAたじまでは、「コウノトリを育むお米」としてギフト用の販売を手がけている。


 同サイトでは、生き物と米の品質の関係を示す注目すべきグラフを載せています。