3-水田の生物多様性を守るために

3.宮城県の「ふゆみずたんぼ」

 宮城県では、「伊豆沼・内沼」(S60.9)月、「蕪栗沼・周辺水田」(H17.11)、「化女沼」(H20.10)がラムサール条約湿地に登録され、20Km圏内に3つの条約湿地が誕生しています。中でも、大崎市の「蕪栗沼・周辺水田」は世界の登録湿地名で唯一「水田」と表記され、世界的にも注目される地域となっています。

 「ふゆみずたんぼ(冬期湛水)」の取組みは、蕪栗沼に飛来するマガンの数が約10年間で10倍に増えて水質汚染等が懸念されたため、冬期間使用しない周辺の水田に水を張り、沼の機能を分散させようとして始まったとのこと。平成15年「田園自然環境保全・再生支援事業」として農家11戸(20ha)からのスタートでした。

(以下は「宮城県蕪栗沼・周辺水田の『ふゆみずたんぼ』~ラムサール条約湿地での多様な生きものを育む取組み~みやぎ・ふゆみずたんぼ研究チーム」からの抜粋、要約)。詳しくは同サイトをご覧ください。



a)「ふゆみずたんぼ」の水管理

 冬にこの水田に飛来する水鳥類の調査を行なったところ、ガン類、白鳥類、カモ類、サギ類などにおける水田利用の生態が明らかになった。

 この調査の結果から、次のような水管理を実施。

①収穫後の早い時期から3月頃までの湛水期間とすること
②初期の水深を8cm以上確保し中干し期間を遅らせる
③ハクチョウ類のねぐらとしては、11月~3月末まで18cm以上を維持する
④カモ類の採食場所としては3月上旬に落水するなど、保全対象や利用目的によって湛水深を変える必要がある。

 しかし、この区域ではアゼの高さが20cm以下と低く、用水も充分でないため、水利条件の改善に取組む必要もでてきた。また、環境配慮検討委員会の提案として、

  • 蕪栗沼に隣接する部分の40ha程度を環境配慮エリアの農地に設定する
  • このエリア内の排水路はコンクリートではなく「浅い土水路」とする
  • 排水路を浅くするために、排水は農道下に専用のパイプを埋設して排水する
  • 環境配慮エリア区域以外でも、排水路に「深み」や「お助け工」を設置する

などを受け、地元農家の合意形成を進めている。


c)冬期湛水の多面的機能

 水利権を新たに取得するための基礎資料として、水利用の実態調査や冬期湛水の多面的機能の調査を実施。これらの調査により、冬期湛水・有機栽培水田によってガン・カモ類やサギ類の水鳥の保全機能が向上、さらに水田内の生物多様性の向上(クモ類、原生生物)や生物量の増加(イトミミズ類)などの多面的な機能が向上することが明らかとなり、「多面的機能の高い自然共生型水田農業モデル」として有効であることが明らかとなった。

 また、ふゆみずたんぼで生物の多様性を確認したところ、水田でのメダカ、ナマズ、フナ等の魚類やトンボのヤゴの生息が確認出来た。ニホンアカガエルの産卵時期に湛水状態になっているため、産卵場所として有効であった。慣行農法の水田に比較してふゆみずたんぼは、農薬を使用しないため、イトミミズ、ユスリカの生息の違いが確認出来た。


d)「ふゆみずたんぼ米」の販売

 蕪栗沼の周辺水田のふゆみずたんぼで栽培された米は「ふゆみずたんぼ米」として販売。定義は、『大崎市の産地づくり交付金の対象となる水田で、12月から3月の間に2ヶ月以上湛水し、農薬・化学肥料不使用、JAS認定、50a以上の連担団地で実施されている水田で生産されている米』としている。

 冬期湛水農法は、2~4割の減収となることから除草作業が必要と考えられる。また、除草作業などの労務費用は米の販売価格に上乗せできないことから、今後の担い手への農地集積を考えた場合は困難である。今後の普及するための取組みは、JAS有機認証は取得しないで、地域全体として、農薬や化学肥料を減ずるため、慣行水田、冬期湛水田のブロックを設定して、ローテーション方式により、取り組んで行くことを考えている。


e)近隣への広がり

 宮城県では、他地域でもふゆみずたんぼの取組が始まっており、その中で最も大きなものは蕪栗沼の北方にある伊豆沼・内沼周辺である。この地区のふゆみずたんぼは、稲刈りが終わった水田に冬期に水を張るが、微生物のエサとするため、水田に米ぬかを散布して湛水する。するとトロトロ層ができ、耕起、代掻きなしで普通の田植機での植付けが可能となる。田植え後は、抑草のための米ぬか散布に加え、深水管理により雑草の抑制に成功している。

 ふゆみずたんぼの米づくりは、田んぼの生きもの調査や自然観察会など、子どもたちの環境教育の場として活用され、都市と農村の交流を通した農作業体験ツアー、修学旅行生の受け入れ、エコツーリズム事業など地域の活動として実践している。ふゆみずたんぼの取組など環境に配慮した事業に取り組むことで、地域経済の活性化と豊かな農村の維持、持続可能な地域づくりを目指すことにつながる。