2-豊かな日本の生態系

1.固有種は世界トップクラス

 これまで述べてきたような地球的規模の大絶滅は幸いにも日本では起きていないようにも思えます。

 生物の数は熱帯に近づくほど多くなると言われています。赤道付近に分布する熱帯雨林地帯は、面積では地上のわずか3%に過ぎないが、(ヒトを除く)霊長類の90%、昆虫の90%、総計すれば地球上の50%以上の種が存在するらしいJST)。

 「国土のほとんどが温帯に属する日本には、何種類の生き物がいるのだろうか?これまでに確認された種は約9万種。なかでも昆虫は3万種と群を抜いて多いが、実際にはその3~4倍はいるだろうと言われている。また日本は、緯度と面積が近い他の国と比較して生き物の多様性が高く、日本にしか生息しない固有種の割合も高い」(JSTのサイトより)

 ダーウインが「進化論」を着想したことでも有名なガラパゴス諸島(動植物種の多いことで世界遺産)でも固有種は110種類ですが、日本は131種。ほ乳類の22%、爬虫類の38%、両生類の74%が日本の固有種であるという調査もあります。ちなみにイギリスは0種とのこと(氷河の影響ともいう)。

 気候や国土面積の割に固有種が多い理由としては、日本自体が島国であり大陸と何度もくっついたり離れたりしたこと(ガラパゴスにはこれがない)、6800余りもの離島を持っていること、亜熱帯という気候条件に恵まれており降水量が極めて多いこと、列島が南北に長く山系が発達し水系が分断されていること、平野から高山まで含むため標高差が大きく地形が複雑なこと等々、いくつか挙げられています。

 その他に、緑被率(国土が森林でおおわれている面積の割合)の高さも少なからず影響しているでしょう。森林は言うまでもなく生物の宝庫です。日本の森林面積は先進国の中でも飛びぬけて多い。ヨーロッパの国々では、森林が国土に占める割合は20~30%。ドイツは30%程度、イギリスは約10%、中国は14%、アメリカは33%。ところが日本は67%(フィンランドの69%に続いて世界第2位)。森林面積でも2500万haと、フィンランドの2300万ha、スウェーデンの2800万haと比べても引けを取りません。

 固有種の多さと生態系の豊かさは完全にイコールではないにせよ、日本は極めて優れた生物多様性を持っているということになります。

 その大きな要因のひとつに、大昔の湿地帯の生態系が水田生態系として代替されてきたという項目を加えても間違いではないでしょう。

 実際に、田んぼには多くの生き物がすんでいます。「全国の水田周辺の水域(魚類調査:311地区1,848地点、カエル類調査:304地区395地点)で実施した田んぼの生き物調査(農林水産省,2005)によれば、魚類が94種、カエル類が17種採捕された。これは日本産野生生物目録に掲載されている日本産淡水種・汽水種200種の47%に、カエル類については固有種の多い沖縄・島嶼を除けば68%にあたる」森淳「水土が育んだ水田生態系の保全にむけて」より


水田の生き物たち
昆虫 トンボ類、アメンボ、マツモムシ、ヒメゲンゴロウ、ヤゴ、クサカゲロウ、ウヅキコモリグモ、アシナガグモ、イナゴ、イチモンジセセリ、キマダラセセリ、アカスジキンカメムシ、ヒメチャバネアオカメムシ、キバラヘリカメムシ、クサギカメムシ、アカスジカメムシ、クモヘリカメムシなど。
水生動物 ホウネンエビ、マルタニシ、カワニナ、モノアラガイ、マシジミ、シマイシビル、カエル、ドジョウ、メダカ、タニシ、アメンボウ、ミズムシ、タイコウチ、ヤゴ、マツモムシ、アメリカザリガニ、ミジンコ、サカマキガイ、オタマジャクシ、スクミリンゴガイ、ミドリガメ、テナガエビなど
魚類 メダカ、タモロコ、モツゴ、タナゴ、タイリクバラタナゴ、ギンブナ、ドジョウ、オイカワ、ヨシノボリ、アカザ、アブラハヤ、カダヤシ、カマツカ、ナマズ、ヌマムツ、ニゴロブナ(琵琶湖周辺)、オオナマズ(琵琶湖周辺)など
鳥類 コサギ、アマサギ、チョウサギ、タシギ、カルガモ、タマシギ、アオアシシギ、セイタカシギ、ダイサギ、ガン、カモ、タカブシギ、コチドリ、クサシギ、カワラヒワ、ヒバリ、ハクセキレイ、ノスリ、トビ、コハクチョウ、コウノトリ、他多数